夏の日。試合が始まると、家族みんなで2階へかけあがり、ベランダで耳を澄ませていた。
聞こえる。大きな歓声と、熱のこもったブラスバンドの演奏が。
釘宮(くぎみや)優里菜さん(高3)の自宅は、阪神甲子園球場から自転車で15分ほどの場所にある。子どものころの「夏」を思い出す時には、高校野球の「音」がつきものだ。
小学校に入る前から球場にも足を運び、「青春ってこんな感じなのかな」と憧れた。ひときわキラキラして見えたのが、アルプス席のブラスバンド。トランペットの音が、歓声を貫くように高らかに響いていた。
小学5年生で地元の音楽隊に入り、中学の吹奏楽部では念願のトランペットを吹いた。
そして、高校進学を前に新たな「出会い」があった。
ネット上で偶然見つけた箕面自由学園(大阪)吹奏楽部のマーチング動画。演奏しながら、体も動かす「魅せる音楽」にワクワクした。吹奏楽と同じくらいダンスも好き。この世界に飛び込みたいと、志望校を「みのじ」に決めた。
アルプスの夏音
高校野球の応援の演奏をめぐる物語
甲子園への「もう一つの方法」
箕面自由学園では、1991年にアメリカンフットボール部「ゴールデンベアーズ」の応援団として、吹奏楽同好会がチアリーダー部とともに発足し、93年に部になった。優里菜さんもアメフトの試合などで、応援演奏の経験を積んだ。
試合に出ている同級生の姿を…